ボツリヌス症 Botulism
更新日:2024年1月26日
1 ボツリヌス症とは
ボツリヌス症は、ボツリヌス菌などが産生するボツリヌス毒素により発症する神経、筋の麻痺性疾患です。
世界中で発生が見られ、我が国でも乳児ボツリヌス症や食餌性ボツリヌス症が年間に数件程度の発生例があります。
2 原因と感染経路
病原体は、クロストリジウム属のボツリヌス菌(Clostridium botulinum)や、同じクリストリジウム属のボツリヌス毒素を産生する菌(C. butyricum、C. baratiiなど)です。
ボツリヌス毒素又はそれらの毒素を産生する菌の芽胞※が混入した食品の摂取などによって発症します。
感染経路の違いによって、以下の4つの病型に分類されています
-
- ア 食餌性ボツリヌス症(ボツリヌス中毒)
- 食品中でボツリヌス菌が増殖して産生された毒素を経口的に摂取することによって発症
-
- イ 乳児ボツリヌス症
- 1歳未満の乳児が菌の芽胞を摂取することにより、腸管内で芽胞が発芽し、産生された毒素の作用によって発症
-
- ウ 創傷ボツリヌス症
- 創傷部位で菌の芽胞が発芽し、産生された毒素により発症
-
- エ 成人腸管定着ボツリヌス症
- ボツリヌス菌に汚染された食品を摂取した1歳以上のヒトの腸管に数か月間菌が定着し毒素を産生し、乳児ボツリヌス症と類似の症状が長期にわたって持続
- ※芽胞:細菌が生物活性を止め休眠状態になり熱や乾燥に対し高い抵抗性を持つ状態になることです。芽胞が再び生物活性を持つ状態になることを発芽といいます。
3 症状
弛緩性麻痺を生じ、全身の違和感、複視、眼瞼下垂、嚥下困難、口渇、便秘、脱力感、筋力低下、呼吸困難などの症状が出ます。適切な治療を施さない重症患者では死亡する場合があります。
4 治療
抗毒素の投与による治療が行われます。発症から24時間以内の投与は、死亡率を減少させるのに有効です。重度のボツリヌス中毒の場合は、数週間または数ヶ月の呼吸管理ができる施設での集中治療が必要です。
5 予防のポイント
予防接種はありません。
ボツリヌス食中毒の予防には、食品中での菌の増殖を抑えることが重要です。乳児ボツリヌス症の予防には、芽胞による汚染の可能性がある食品(ハチミツなど)を避けることです。
6 診断・感染症法との関連
診断は、ボツリヌス毒素の検出、あるいは病源体を検出し毒素産生の確認や毒素遺伝子の検出、原因食品からのボツリヌス毒素の検出、抗体検査によります。
感染症法では、四類感染症に定められており、診断した医師は直ちに最寄の保健所へ届け出ることが義務づけられています。
7 さらに詳しい情報が必要な方は
- ボツリヌス症(国立感染症研究所)
- ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)(食品衛生の窓 | 東京都保健医療局)
- Botulism(Fact sheet | WHO)