更新日:2023年5月30日
1 カルバペネム耐性腸内細菌目細菌感染症とは
カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症は、メロペネムなどのカルバペネム系薬剤及び広域β-ラクタム剤に対して耐性を示す腸内細菌目細菌による感染症の総称です。
2 原因と感染経路
原因となる病原体は、最後の切り札的抗菌薬であるイミペネムやメロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬に対し耐性を獲得した、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)や大腸菌(Escherichia coli)などの腸内細菌目に属する細菌です。
主に感染防御機能の低下した患者や外科手術後の患者、抗菌薬を長期にわたって使用している患者などに感染します。
感染経路は菌の種類により異なりますが、主に接触感染です。呼吸器感染症をきたした場合は、そこから飛沫感染の形で伝播する可能性があります。手洗いや消毒が不完全であると、汚染された医療器具や医療従事者の手などを通じて感染を起こすことがあります。
3 症状
肺炎などの呼吸器感染症、尿路感染症、手術部位や外傷部位の感染症、カテーテル関連血流感染症*1、敗血症*2、髄膜炎など、菌の種類、感染箇所により多様な感染症を起こします。
無症状で腸管等に保菌されることも多くあります。
- *1 カテーテル関連血流感染症:血管に薬液の点滴注入を行うカテーテルを経由して血液が細菌に感染してしまう感染症です。カテーテル局所の感染にとどまらず、全身の血液感染症になることもあり、時として重症化し命に関わることがあります。
- *2 敗血症:血液中に細菌が侵入したことにより引き起こされる感染症によって全身性の反応が起こることをいいます。典型的な全身性の反応として、発熱、脱力、心拍数の増加などがみられます。
4 治療
治療は菌の薬剤感受性及び感染した人の病態に合わせて行われます。
5 予防のポイント
健康な人への感染はほとんど心配ありません。病院に入院している人を見舞うなどの際には、手洗いと消毒をしっかり行うようにしましょう。また、ご家族の方が感染した場合には、患者さんの喀痰や便などの処置や処理の際に手袋を用い、終了後には、石鹸で手指を洗えば問題ありません。
院内感染対策として、ドアノブ、手すりなど手が触れる場所の清掃・消毒により院内の環境を清潔に保つことや、人工呼吸器などの医療器具の消毒や手洗いを徹底することが重要です。
免疫機能異常、慢性肺疾患、糖尿病など基礎疾患を持っている方は、基礎疾患の治療を適切に行うことも感染予防のために大切です。
海外での治療歴などがある場合、無症状で保菌している可能性があるので、体調不良で医療機関を受診した際には、海外に出かけていたことを医師に伝えてください。
6 診断・感染症法との関係
診断は、病原体を検出し、その薬剤耐性を確認して行います。
感染症法では、五類感染症(全数把握対象)として定められており、診断した医師は7日以内に最寄の保健所へ届け出ることが義務づけられています。ただし、感染症を発症している患者のみが対象で、無症状の保菌者は届出対象ではありません。
7 その他の関連情報
- 多剤耐性菌について(厚生労働省)
- カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症(国立感染症研究所)
- 米国CDCが警告を発したカルバペネム耐性腸内細菌(CRE)に関するQ&A(国立感染症研究所)
- About Carbapenem-resistant Enterobacterales(CDC)