更新日:2017年3月9日
1 播種性クリプトコックス症とは
播種性クリプトコックス症は、真菌の一種による感染症です。世界中でみられますが、我が国でも年間100件程度の患者の報告があり、都内でも発生があります。
播種性とは「全身に広がる性質があること」という意味です。
感染症法では、「病原体が髄液、血液などの無菌的臨床検体から検出」または「脳脊髄液のクリプトコックス莢膜抗原が陽性」が、この感染症の定義となっています。
2 原因と感染経路
病原体は、真菌のクリプトコッカス属(Cryptococcus)です。クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)と、クリプトコッカス・ガッティー(Cryptococcus gattii)などがあります。
この真菌は種類により生息場所が異なりますが、クリプトコッカス・ネオフォルマンスは土壌に生息する真菌で、腐敗した木材、樹木の窪み、または鳥の糞中でも増殖します。クリプトコッカス・ガッティーは、樹木の近くおよび樹木の周りの土壌に生息しています。オーストラリア産のユーカリに生息しているといわれていた真菌ですが、近年では世界中の熱帯、亜熱帯地域や米国太平洋北西部で分布が広がっていることがわかっています。これらの真菌を含んだほこりが巻き上げられ、それを肺に吸い込むことによって感染します。
健常者は、吸引して感染しても発症することはまれで、免疫機能が低下するなどした際に発症することがあります。
ヒトからヒトにうつることはありません。
3 症状
潜伏期は不明で、感染が広がった部位によって症状が異なり、発熱、頭痛、発疹、筋肉痛、体重減少、倦怠感や乾いた咳など様々です。重症の肺炎や脳の障害によるけいれん、意識障害、性格変化などの症状が出ることがあります。
免疫機能の低下した人が感染すると、脳髄膜炎を発症することが多く、重症化しやすいので注意が必要です。
4 治療
抗真菌剤の投与が行われます。場合によって病変部位の切除手術を行うことがあります。
5 予防のポイント
予防接種はありません。
流行地で土ほこりにさらされる活動をする場合には、顔にフィットした防塵マスク(0.4μm以上の粒子を通さないもの)を着用してください。免疫機能の低下している人は、土ほこりの生じるところや鳥のふんがあるところに近づかないようにしましょう。
免疫機能が低下している人は、場合によって抗真菌剤を予防的に投与することがあります。
6 診断・感染症法との関連
診断は、病原体の検出、あるいは病理組織学的診断、クリプトコックス莢膜抗原の検出によります。
感染症法では、五類感染症に定められており、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出ることが義務づけられています。
7 さらに詳しい情報が必要な方は
- IASR Vol. 36, No.10 (No. 428) October 2015クリプトコッカス症の特集(国立感染症研究所)
- 播種性クリプトコックス症の感染症法に基づく届出について(モダンメディア 61巻7号2015)
- Cryptococcosis(CDC)