更新日:2014年6月16日
東京都では、感染症法に基づく感染症発生動向調査事業として、地方感染症情報センター(東京都健康安全研究センター)で患者情報のほか病原体情報についても収集・分析を行い、還元・公表を行っています。インフルエンザについては、インフルエンザ病原体定点医療機関(都内41か所)から搬入された検体について検査を実施し、インフルエンザウイルスが分離された場合には、ウイルスの遺伝子型・薬剤感受性等に関する検査を行っています。
1 薬剤耐性遺伝子マーカーの検出状況
今シーズン、2014年5月22日までに分離されたAH1pdm09*1ウイルス157株について、遺伝子解析による薬剤耐性マーカー遺伝子*2の有無を確認したところ、6株が耐性マーカー遺伝子を持つことが判明しました。
これら6株を国立感染症研究所で薬剤感受性試験を行った結果、オセルタミビルおよびペラミビル*3に対して耐性を示すことが確認されました。
分離株における耐性マーカー遺伝子の有無等(2014年5月22日現在)
AH1pdm09 |
耐性マーカー遺伝子の有無 |
薬剤感受性試験結果 |
157 |
有(6) |
オセルタミビル及びペラミビル耐性6株 |
無(151) |
- |
国内の抗インフルエンザ薬耐性ウイルスの検出状況は、国立感染症研究所により随時発表されており(下記リンク参照)、抗インフルエンザ薬の投与・ワクチン効果等については、これらの情報についても参考にして下さい。
<速報>日本国内で初めて検出されたH275Y/I223R二重耐性変異をもつノイラミニダーゼ阻害剤耐性インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルス(国立感染症研究所IASR)
<速報>山形県で検出された抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09ウイルス(国立感染症研究所IASR)
抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス(国立感染症研究所)
なお、2014年1月28日に日本小児科学会インフルエンザ対策ワーキンググループにより、2013-2014年シーズンのインフルエンザ治療指針が示されています。
日本小児科学会インフルエンザ対策ワーキンググループ、2013/2014シーズンのインフルエンザ治療指針
*1 2009(平成21)年に流行したインフルエンザウイルス。2009年当時は新型インフルエンザとの法的位置づけであったが、2011年3月に季節性インフルエンザに変更された。
*2 A型インフルエンザウイルスは、ウイルス表面のヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という2種類の糖タンパク質により、H3N2などの亜型に分かれるが、耐性マーカー遺伝子はノイラミニダーゼ遺伝子に生じた変異の一つ。
抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)はノイラミニダーゼの働きを阻害し、ウイルス増殖を防ぐ役割がある。
マーカー遺伝子の検出は、耐性ウイルスを見つけるための指標の一つであり、臨床における薬剤の感受性の有無は、薬剤感受性試験により判断される。
*3 現在使用されている抗インフルエンザ薬(カッコ内は商品名):オセルタミビル(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、ペラミビル(ラピアクタ)、ラニナミビル(イナビル)
2 前シーズン(2012-2013年シーズン)までの検出状況
シーズン |
AH1pdm09 |
耐性マーカー |
薬剤感受性試験結果 |
2012-2013年 |
5 |
有(0) |
|
無(5) |
|
||
2011-2012年 |
0 |
有(0) |
|
無(0) |
|
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2010-2011年 |
151 |
有(2) |
オセルタミビル、ペラミビルに2株とも低感受性 |
無(149) |
|
||
2009-2010年 |
546 |
有(1) |
オセルタミビル耐性1株 |
無(545) |
|