東京都健康安全研究センター
マラリア Malaria

更新日:2015年5月7日

1 マラリアとは

 マラリアは、結核、エイズと並ぶ世界の3大感染症のひとつです。罹患者が世界中で年間約2.2億人,死亡者が年間約66万人にのぼるとWHOより報告されています。日本では、戦前には土着のマラリアがみられましたが、現在は国内での感染による発生はありません。

 マラリア原虫を持った蚊(ハマダラカ)に刺されることによって生じる感染症です。イタリア語の「悪い」mal、「空気」ariaというのがマラリア(malaria)の語源で、1880年にラヴランが赤血球内に寄生するマラリア原虫を発見するまで空気感染する病気と考えられてきました。

2 原因と感染経路

 病原体はプラスモディウム属の原虫(Plasmodium spp.)で、ヒトに感染するマラリア原虫は、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)の4種類です。しかしながら、近年、サルマラリア原虫の1種であるP. knowlesiのヒトへの自然感染例が東南アジアの広い範囲で確認され、P. knowlesi感染症は第5のヒトマラリアと考えられるようになってきました。

 マラリア原虫を持つ蚊がヒトを刺すことによって感染します。ヒトからヒトへの感染はありません。

3 症状

 マラリアの主な症状は、発熱、貧血、脾腫です。潜伏期間は、熱帯熱マラリア7~14日、三日熱マラリア12~17日、四日熱マラリア18~40日、卵形マラリア11~18日、P. knowlesiによるマラリアは10~12日です。熱発作の周期は、熱帯熱マラリアでは不規則ですが、三日熱マラリアと卵形マラリアでは48時間、四日熱マラリアでは72時間、P. knowlesiによるマラリアでは24時間毎に発熱が認められるのが特徴です。

4   治療

  治療は抗マラリア薬により行われます。抗マラリア薬にはいくつかあり、感染した地域や、治療をする国によって、使用する薬剤が異なります。通常は内服ですが、重症例では、注射や座薬での治療が行われる場合があります。

5 予防のポイント

  予防接種はありませんが、マラリアには予防薬があります。マラリア流行地へ渡航する際は、抗マラリア薬の予防内服を行うことが望ましいとされています。マラリア予防薬は、医師の処方が必要です。渡航先の流行状況や滞在期間、活動内容、基礎疾患の有無などによって適応となる予防薬が異なります。ご自分の体調や渡航先について事前に専門医と相談し、指示に従って服用してください。予防薬を服用していても、蚊に刺されないように工夫をする必要があります。

蚊の繁殖や虫刺されを防ぐ工夫

  • マラリアを媒介するハマダラカは夕方から夜間に活動することから、流行地では夜間の外出は避ける。
  • 蚊の繁殖を防ぐため、雨水タンクに蓋をしたり、タイヤに溜まった水・ペット用の水・鉢植えの皿の水を放置しない。
  • 室内の花瓶の水などは最低週1回は交換する。
  • 戸外に出るときは肌の露出をできるだけ避ける。
  • 虫よけ剤を適切に使用する。
  • 蚊が室内に入らないよう戸や窓の開け閉めを減らし網戸やエアコンを使用する。
  • 渡航の際は設備が整った(網戸の設置や必要な清掃が行われている等)宿泊施設を利用する。

マラリア原虫を媒介する蚊

マラリアの感染リスクのある地域

 アジア、オセアニア、アフリカおよび中南米の熱帯・亜熱帯地域で流行しています。

 マラリアの感染リスクのある地域(厚生労働省検疫所 FORTH)

東京都における感染症媒介蚊サーベイランス

 東京都健康安全研究センターではデング熱、マラリア、チクングニア熱、ウエストナイル熱等を媒介する蚊について種類の同定およびウイルス等の保有の有無を調査するため、都内の公園等でトラップを用いた蚊の成虫に対するサーベイランス(調査監視)を実施しています。

 感染症媒介蚊サーベイランス

6 診断・感染症法との関連

 診断は、病源体の検出あるいは抗原検査などによります。

 感染症法では、四類感染症として定められており、診断した医師は直ちに最寄の保健所に届け出ることが義務付けられています。

7 さらに詳しい情報が必要な方は

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