更新日:2020年3月5日
1 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症とは
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症とは、メチシリンなどのペニシリン剤をはじめとして、β-ラクタム剤、アミノ配糖体剤、マクロライド剤などの多くの薬剤に対し多剤耐性を示す黄色ブドウ球菌による感染症です。
2 原因と感染経路
病原体は、メチシリン耐性を示す黄色ブドウ球菌(Methicillin‐Resistant Staphylococcus aureus)です。
一般的な黄色ブドウ球菌の感染経路は接触感染や飛沫感染です。健康な人の常在菌で皮膚や鼻腔内にも存在し、傷口の化膿の原因になることがあります。しかし、細菌感染症に対する抵抗力が低下した入院患者などが感染した場合、特に手術後の患者は感染の危険性が高くなります。免疫が低下した人などでは様々な疾患の原因となる、いわゆる日和見感染症の原因となります。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、現在、院内感染症の最も主要な原因菌の一つとなっています。
3 症状
一般的な黄色ブドウ球菌による感染と同じです。皮膚の切創や刺創などに伴う化膿、毛嚢炎などの皮膚組織の炎症から、肺炎、腹膜炎、敗血症、髄膜炎などに至るまで様々な症状があります。
4 治療
効果のある抗菌薬を調べ、その抗菌薬を用いて治療します。各種の抗菌薬に抵抗性を示すため、治療が難渋し重症化する事があります。
5 予防のポイント
健康な人への感染はほとんど心配ありませんが、病院に入院している人を見舞うなどの際には、手洗いや手指消毒をしっかり行うなど、病院の注意事項に従いましょう。
院内感染対策として、ドアノブ、手すりなど手が触れる場所の清掃・消毒により院内の環境を清潔に保つことや、人工呼吸器などの医療器具の消毒や手洗いを徹底することが重要です。
免疫機能異常、慢性肺疾患、糖尿病など基礎疾患を持っている方は、基礎疾患の治療を適切に行うことも感染予防のために大切です。
6 診断・感染症法との関連
診断は、病原体を検出し、その薬剤耐性を確認して行います。
感染症法上、五類感染症(定点把握対象)に定められており、基幹定点医療機関から毎月患者数が報告されています。
7 さらに詳しい情報が必要な方は
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(国立感染症研究所)
- MRSA感染症の治療ガイドライン(一般社団法人 日本感染症学会)
- 院内感染対策マニュアル(2010年版)(保健医療局医療政策部医療安全課)