東京都健康安全研究センター
ペスト plague

更新日:2019年7月31日

1 ペストとは

 14世紀のヨーロッパで「黒死病」と呼ばれ大流行した感染症です。日本では1926年以降患者の報告はありませんが、アフリカ山岳地帯及び密林地帯、東南アジア、中国、モンゴル、アラビアからカスピ海西北部、北米ロッキー山脈周辺、南米アンデス山脈周辺などがペストの発生地域になっています。

 

2 原因と感染経路

 ペスト菌(Yersinia pestis)を原因とし、菌を保有するネズミなどげっ歯類からノミを介して感染します。また、感染したヒトや動物の排泄物から傷口や粘膜を介して感染することや、飛沫によって感染することもあります。

 

3 症状

 症状や感染経路により腺ペスト、敗血症ペスト、肺ペストに分けられていますが、患者の80~90%は腺ペストです。腺ペストの潜伏期間は2~6日で、ノミの刺し口に近いリンパ節の腫れのほか、発熱や頭痛、悪寒などの全身症状が現れます。敗血症ペストは約10%で、リンパ節の腫れがみられないまま敗血症をおこし、皮下に黒い出血斑がでてきます。このため「黒死病」といわれました。

 肺ペストは高熱、頭痛などの非特異的な症状で発症しますが、症状の進行が早く、喀血、呼吸器困難をきたす重症急性進行性肺炎となります。

 

4 治療

 抗菌薬が奏功するため早期治療が重要です。アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール系、ニューキノロン系の抗菌薬が使用されます。

 

5 予防のポイント

 感染の予防策としてはペスト菌を保有するノミやネズミの駆除。腺ペスト患者の体液に触れないことが最も重要です。また、患者、疑似患者、無症状病原体保有者の第1種感染症指定医療機関などの入院をすすめることや、患者やげっ歯類に直接接触した人への抗菌薬の予防投与も有効です。

 

6 病原体診断・感染症法との関係

 血液、リンパ節腫吸引物、喀痰等からペスト菌を分離培養・同定して、診断します。他に抗原検出、ペスト菌特異的遺伝子のPCR検出も行います。感染症法では一類感染症に定められており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出ることが義務づけられています。特定感染症指定医療機関か第一種感染症指定医療機関に入院します。退院は血液や尿からペスト菌が分離されないことを確認してから許可されます。

 学校保健安全法では治癒するまで出席は停止です。検疫法では検疫感染症で、隔離や停留などの措置が必要です。

 

7 さらに詳しい情報が必要な方は

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