更新日:2023年8月1日
1 狂犬病とは
狂犬病とは狂犬病ウイルスを持つ動物に、咬まれたり引っ搔かれたりしてできた傷口から、ウイルスが侵入して感染する病気です。
毎年、アジア・アフリカ地域を主とした、150以上の国と地域で発生し約5万人以上の死者がでています。水などを恐れるようになる特徴的な症状があるため、恐水病または恐水症と呼ばれることがあります。
日本での狂犬病は1957年以降発生していません。輸入感染事例としては狂犬病流行国でイヌに咬まれ帰国後に発症した事例が、1970年にネパールからの帰国者で1件、2006年にフィリピンからの帰国者で2件、2020年にはフィリピンからの入国者で1件の発生がありました。
2 病原体と感染経路
病原体は狂犬病ウイルスです。狂犬病ウイルスは、ラブドウイルス科リッサウイルス属に属しています。
一般には感染した動物の咬み傷などから唾液に含まれるウイルスが侵入することで感染します。傷口、目や口の粘膜をなめられたりすることでも感染することがあります。
狂犬病ウイルスはヒトを含む全ての哺乳類に感染することが知られています。ヒトへの感染は99%がイヌからの感染です。まれに、イヌ以外の野生動物(アライグマ、キツネ、コウモリなど)からの感染もあります。
通常、ヒトからヒトへ感染することはなく、感染した患者から感染が拡大することはありません。
3 症状
潜伏期間は1~3か月ですが、1年以上の事例の報告もあります。発熱、頭痛、全身倦怠やおう吐などが起こります。ついで、筋肉の緊張、幻覚、けいれん、ものを飲み込みづらいなどが起きます。
さらに液体を飲もうとすると筋肉がけいれんするため、水を恐れるようになり(恐水症)、やがて昏睡状態となり、呼吸が麻痺し死亡します。
症状があらわれた場合の致死率はほぼ100%です。
4 治療
発症した場合、ほぼ100%の人が死亡するため、発症前に治療を行い、ウイルスが中枢神経系に侵入するのを防ぐことが重要です。
感染動物に咬まれるなど感染した疑いがある場合には、直ちに15分間は水と石鹸で傷口をよく洗い、できるだけ早く連続したワクチン接種(暴露後ワクチン接種)をすることで発症を抑えることができます。感染動物との接触状況によっては、追加で狂犬病免疫グロブリンやモノクローナル抗体の投与を行うこともあります。
5 予防のポイント
流行地域へ旅行する際は事前に予防接種を受けることを検討しましょう。また、動物にむやみに近づかないようにしましょう。
6 診断(検査)・感染症法との関連
- 分離・同定による病原体の検出
- 蛍光抗体法による病原体の抗原の検出
- PCR法による病原体遺伝子の検出
- Fluorecent Focus Inhibition TestまたはELISA法による抗体の検出
四類感染症に定められており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出ることが義務づけられています。
イヌなどの狂犬病については狂犬病予防法の適用を受け、ウシやウマなどの狂犬病については家畜伝染病として家畜伝染病予防法の適用を受けます。
7 さらに詳しい情報が必要な方は
- 狂犬病とは(国立感染症研究所)
- 狂犬病検査マニュアル(第2版)(国立感染症研究所)
- 狂犬病に関するQ&Aについて(厚生労働省)
- 狂犬病(厚生労働省検疫所 FORTH)
- Rabies(CDC)