更新日:2011年3月8日
1 NDM-1とは
NDM-1とはニューデリー・メタロβラクタマーゼ-1の略です。NDM-1遺伝子を持つ細菌は、大腸菌や肺炎桿菌などの腸内細菌です。NDM-1遺伝子を持つ腸内細菌は、カルバペネムなどの抗菌薬が効きづらくなる酵素を産生します。カルバペネムは強力な抗菌薬の1つで、他の抗菌薬では効果がない感染症を治療する際に使用されます。
NDM-1遺伝子は、プラスミドといった細胞核の外にある構造物に存在しています。そのため他の細菌に簡単にNDM-1遺伝子を伝播することが出来ます。このように伝播し易い特徴があるため、カルバペネム以外の複数の抗菌薬に既に耐性を持っている細菌にNDM-1遺伝子が伝播しないか懸念されています。このようなことが起こった場合、治療することが困難な感染症となる可能性があります。
2 流行状況
インドやパキスタンなどのインド大陸、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなどでNDM-1遺伝子を持つ細菌が確認されています。
日本では今までのところ3人の患者からNDM-1遺伝子を持つ腸内細菌が確認されていますが、この患者から他の人への感染の拡大は認められていません。
3 感染経路
NDM-1の主な感染経路として、手や便を介した接触感染が推定されます。
ヨーロッパやアメリカなどで確認されている感染者の多くは、最近インドやパキスタンで医療を受けており、同地で感染したものと考えられています。それ以外の感染者もインドやパキスタンで医療を受けた人からの感染が疑われています。日本で確認されている感染者の1人もインドへの渡航歴があります。
インドやパキスタンで医療行為を受けるなど、現地でNDM-1遺伝子を持つ腸内細菌に接触する機会がある場合、NDM-1に感染する危険性が高くなります。
4 症状
NDM-1遺伝子を持つ腸内細菌は尿路感染や敗血症などの病気を引き起こす可能性があります。症状は引き起こされた病気に左右されるため、軽症から重症までさまざまです。何人かの患者は死亡しています。
5 治療
抗菌薬の多くに耐性のあるいくつかの菌株が既に確認されています。このため抗菌薬の効き目を調べる薬剤感受性試験は大切です。NDM-1に感染した人の病態、薬剤感受性試験の結果を考慮して治療が行われます。
6 予防
帰宅時(病院へのお見舞いの場合はその前後)、トイレの後、食事の前などの手洗いが基本になります。
消毒には、加熱や消毒用アルコールなどが有効です。消毒を行う際には事前に洗浄などで目立った汚れを取り除いておくと消毒効果を高めることが出来ます。
7 その他の関連情報
多剤耐性菌について(厚生労働省)