更新日:2016年12月9日
1 痘そうとは
痘そうとは、天然痘ウイルスによる感染症で、一般には「天然痘」として知られています。
我が国では1956年以降に国内での発生はみられておらず、1976年にワクチン接種が廃止されています。世界的には、1980年5月に世界保健機構(WHO)により天然痘の世界根絶宣言がなされ、その後も現在まで患者の発生はありません。
一方、WHOは生物テロに使用される可能性が高い病原体としての天然痘ウイルスを位置づけています。一例の発生でも、高い感染性と致死率から非常に大きな問題となるため、症例の確実な探知と迅速な対応を目的として2003年10月の感染症法改正より届出の対象となっています。
2 原因と感染経路
病原体は、天然痘ウイルス(Poxvirus variolae)です。致命率が高い(20~50%)”variola major”と、致命率が低い(1%以下)”variola minor”に分けられます。
感染経路は、くしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスを吸い込むことによる感染(飛まつ感染)や、患者の発疹やかさぶたなどの排出物に接触することによる感染(接触感染)があります。患者の皮膚病変との接触やウイルスに汚染された患者の衣類や寝具なども感染源となります。
3 症状
潜伏期間は12日間(7~16日)程度です。
急激な発熱(39℃前後)、頭痛、四肢痛、腰痛などで始まり、一時解熱したのち、発疹が全身に現れます。発疹は紅斑→丘疹→水疱(水ぶくれ)→膿疱(水ぶくれに膿がたまる)→結痂(かさぶた)→落屑と規則正しく移行します。水痘のように各時期の発疹が同時に見られるのではなくその時期に見られる発疹がすべて同一であること、また、水疱にくぼみがあるのが特徴です。治癒する場合は2~3週間の経過で、色素沈着や瘢痕を残します。
感染すると終生免疫(一度の感染で生涯、その感染症にはかからない)を得ます。
4 治療
治療は対症療法が主体となります。
5 予防のポイント
有効な予防法は予防接種ですが、根絶状態のため、現在は行われていません。
患者に接触した場合でも、3日以内にワクチンを接種すれば発病を予防したり、症状を軽減できるとされています。
6 診断・感染症法との関連
診断は、病源体の検出、病原体の遺伝子の検出、抗原検査あるいは抗体検査によります。
感染症法では一類感染症に定められており、診断した医師は直ちに最寄の保健所へ届け出ることが義務付けられています。
7 さらに詳しい情報が必要な方は
- 天然痘(痘そう)とは(国立感染症研究所)
- 天然痘 – smallpox(詳細)(バイオテロ対応ホームページ 厚生労働省研究班)
- 天然痘対応指針(第五版)(厚生労働省)
- Health topics : Smallpox(WHO)