更新日:2017年3月9日
1 野兎症とは
野兎症は、細菌の一種である野兎病菌による感染症です。北米、北アジアからヨーロッパまでの、ほぼ北緯30度以北の北半球に広く発生しています。我が国でも以前は感染した野ウサギからヒトの感染が確認されていましたが近年ではまれです。
2 原因と感染経路
病原体は、野兎病菌(Francisella tularensis)です。
野兎病菌の感染力は極めて強く、目などの粘膜部分や皮膚の細かい傷だけでなく健康な皮膚からも侵入し感染するのが特徴です。感染した野生動物やその死骸に触れると皮膚から感染します。感染している主な野生動物は野ウサギや野ネズミなどのげっ歯類ですが、様々な哺乳動物や鳥類が野兎病菌に感染していることがあります。
また、感染した野生動物から吸血したダニなどにヒトが咬まれることで感染することがあります。海外では汚染した生水の摂取や汚染されたほこりを吸入することで感染した事例もあります。
3 症状
潜伏期は3日から1週間です。まれに2週間以上や1ヶ月以上の場合があります。
症状は感染経路により異なりますが、感染初期の症状は、突然の発熱、寒気がしてガタガタ震える、頭痛、筋肉痛、関節痛などです。その後、野兎病菌の侵入部位に近いリンパ節のうずくような痛みと共に腫れや膿むことがあり、潰瘍になるなどの様々な症状が出ることがあります。また、汚染されたほこりを吸入して感染した場合に肺炎になり重症化する場合もあります。
4 治療
治療には抗菌薬を使用します。治療が遅れると重症化することがありますので、早期発見・早期治療が重要です。
5 予防のポイント
流行地においては、死体を含め野ウサギやげっ歯類などとの接触は避けましょう。
野山、河川敷などにやむを得ず立ち入る場合は、ダニや昆虫に咬まれることを防ぐために、肌の露出を避け、虫よけ剤を適宜使用します。地面に寝転んだり腰をおろすことは避けましょう。また、衣類にダニがついていることがあるので、帰宅後は、早めに着替え、屋内にダニを持ち込まないように注意しましょう。
汚染されている可能性のある場所では、水を飲まないようにしましょう。
6 診断・感染症法との関連
診断は、病原体あるいは病原体の遺伝子の検出、抗体検査によります。
発症以前に、ダニに咬まれたり、野生動物や死んだ野ウサギとの接触などの活動歴があれば本症が疑われます。
感染症法では、四類感染症に定められており、診断した医師は直ちに最寄の保健所へ届け出ることが義務づけられています。
7 さらに詳しい情報が必要な方は
- 野兎病とは(国立感染症研究所)
- 野兎病について(厚生労働省)
- 動物等取扱業者のための野兎病Q&A(厚生労働省)
- Tularemia(CDC)