更新日:2016年11月9日
1 バンコマイシン耐性腸球菌感染症とは
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症は、バンコマイシンに対して耐性を示す腸球菌による感染症です。
2 原因と感染経路
腸球菌(Enterococci)は様々な抗菌薬に耐性があり、効果がある抗菌薬としてバンコマイシンを用いた治療が行われていますが、そのバンコマイシンに対し耐性を獲得した腸球菌に感染することが原因です。
腸球菌は人体内の常在菌でもあり、基本的に病原性は極めて弱く、バンコマイシン耐性腸球菌も腸管内に生息してる場合はほとんど無害ですが、術後患者や感染防御機能の低下した患者では感染症を引き起こす場合があります。
感染経路は主に接触感染です。手洗いや消毒が不完全であると、汚染された医療器具や医療従事者の手などを通じて院内感染を起こすことになります。
3 症状
腹膜炎、術創感染症、肺炎、敗血症などの感染症を起こします。
4 治療
治療は菌の薬剤感受性及び感染した人の病態に合わせて抗菌薬の投与とともに感染巣の洗浄やドレナージなどが行われます。
5 予防のポイント
健康な人への感染はほとんど心配ありませんが、病院に入院している人を見舞うなどの際には、手洗いと消毒をしっかり行うようにしましょう。
院内感染対策として、ドアノブ、手すりなど手が触れる場所の清掃・消毒により院内の環境を清潔に保つことや、人工呼吸器などの医療器具の消毒や手洗いを徹底することが重要です。
免疫機能異常、慢性肺疾患、糖尿病など基礎疾患を持っている方は、基礎疾患の治療を適切に行うことも感染予防のために大切です。
6 診断・感染症法との関係
診断は、病原体を検出し、その薬剤耐性を確認して行います。
感染症法では、五類感染症(全数把握対象)として定められており、診断した医師は7日以内に最寄の保健所へ届け出ることが義務づけられています。
7 その他の関連情報
- バンコマイシン耐性腸球菌感染症(国立感染症研究所)
- Vancomycin-resistant Enterococci (VRE) Basics(CDC)