更新日:2016年9月5日
1 バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症とは
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症とは、バンコマイシン耐性を示す黄色ブドウ球菌による感染症です。バンコマイシンは、多くの抗菌薬に耐性を持った菌にも効果があるとされて治療に用いられている抗菌薬です。
この感染症は世界的に稀で、日本では発生していません。
2 原因と感染経路
病原体は、バンコマイシン耐性を示す黄色ブドウ球菌(Vancomycin-Resistant Staphylococcus aureus:VRSA)です。
一般的な黄色ブドウ球菌の感染経路は接触感染や飛沫感染です。健康な人の常在菌で皮膚や鼻腔内にも存在し、傷口の化膿の原因になることがあります。しかし、細菌感染症に対する抵抗力が低下した入院患者などが感染した場合、特に手術後の患者は感染の危険性が高くなります。免疫が低下した人などでは様々な疾患の原因となる、いわゆる日和見感染症の原因となります。
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌は、バンコマイシンの長期間投与を続けると発生する可能性があります。
3 症状
一般的な黄色ブドウ球菌による感染と同じです。皮膚の切創や刺創などに伴う化膿、毛嚢炎などの皮膚組織の炎症から、肺炎、腹膜炎、敗血症、髄膜炎などに至るまで様々な症状があります。
4 治療
効果のある抗菌薬を調べ、その抗菌薬を用いて治療します。効果のある抗菌薬がない場合には、治療が困難となります。
5 予防のポイント
我が国では発生事例がないため、医療施設における耐性菌の発生を抑えるためバンコマイシンの適正使用が求められています。また、耐性菌が発生した際には感染拡大の予防として医療施設内での耐性菌の伝搬を抑えるための院内感染対策が必要になります。
健康な人への感染はほとんど心配ありませんが、病院に入院している人を見舞うなどの際には、手洗いや手指消毒をしっかり行うなど、病院の注意事項に従いましょう。
6 診断・感染症法との関連
診断は、病原体を検出し、その薬剤耐性を確認して行います。
感染症法では、五類感染症として定められており、診断した医師は7日以内に最寄の保健所に届け出ることが義務付けられています。
7 さらに詳しい情報が必要な方は
- バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症(国立感染症研究所)
- Staphylococcus aureus Basics(CDC)