更新日:2015年5月7日
1 ウエストナイル熱とは
ウエストナイル熱は、ウエストナイルウイルスによる感染症で、アフリカ、ヨーロッパをはじめ、世界の広い地域に分布しています。このウイルスは1937年に初めて、ウガンダのWest Nile地方で発熱した女性から分離されました。主に蚊を介してヒトに感染し、発熱や脳炎を引き起こします。
2 原因と感染経路
ウエストナイルウイルス(West Nile virus)が原因です。
ウイルスはカラスやスズメなど鳥の体内で増殖し、その血液を吸った蚊(イエカ、ヤブカ)に刺されることでヒトに感染します。
ヒトからヒトへの感染はありません
3 症状
感染しても症状を示さないことが多く、発症する人の割合は約20%です。2〜6日の潜伏期間の後、39℃以上の発熱、激しい頭痛、筋肉痛がおこります。半数くらいの患者では、胸、背中、腕などに発疹が現れます。多くは短期間(約1週間)で回復しますが、まれに、高齢者などは重症化して、麻痺や痙攣をおこし死亡することがあります。
4 治療
特別な治療法はなく、症状に応じた対症療法が行われます。
5 予防のポイント
予防接種はありません。ウエストナイル熱の流行地域に渡航する際は、蚊に刺されない工夫をする必要があります。
蚊の繁殖や虫刺されを防ぐ工夫
- 蚊の繁殖を防ぐため、雨水タンクに蓋をしたり、タイヤに溜まった水・ペット用の水・鉢植えの皿の水を放置しない。
- 室内の花瓶の水などは最低週1回は交換する。
- 戸外に出るときは肌の露出をできるだけ避ける。
- 虫よけ剤を適切に使用する。
- 蚊が室内に入らないよう戸や窓の開け閉めを減らし網戸やエアコンを使用する。
- 渡航の際は設備が整った(網戸の設置や必要な清掃が行われている等)宿泊施設を利用する。
ウエストナイルウイルスを媒介する蚊
- イエカ、ヤブカの写真(国立感染症研究所)
ウエストナイル熱の感染リスクのある地域
アフリカ、ヨーロッパ、中東、西アジアなどの広い地域に感染がみられます。
マラリアと異なり、都市部でも感染の可能性があります。
- ウエストナイル熱の感染リスクのある地域(厚生労働省 ウエストナイル熱の診断・治療ガイドライン)
東京都における感染症媒介蚊サーベイランス
東京都健康安全研究センターではデング熱、マラリア、チクングニア熱、ウエストナイル熱等を媒介する蚊について種類の同定およびウイルス等の保有の有無を調査するため、都内の公園等でトラップを用いた蚊の成虫に対するサーベイランス(調査監視)を実施しています。
6 診断・感染症法との関連
診断は、病源体の検出あるいは抗体検査となどによります。
感染症法では、四類感染症として定められており、診断した医師は直ちに最寄の保健所に届けることが義務付けられています。
7 さらに詳しい情報が必要な方は
- 感染症媒介蚊対策について(東京都保健医療局環境保健衛生課)
- ウエストナイル熱/ウエストナイル脳炎とは(国立感染症研究所)
- ウエストナイル熱について(厚生労働省)
- ウエストナイル熱(厚生労働省検疫所 FORTH)
- West Nile Virus(CDC)
- West Nile virus infection(ECDC)