都内保健所の受診者抗体陽性例におけるHIVのサブタイプ解析(第20巻、6号)
1999年6月
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、全世界的に流行しているHIV−1とアフリカの一部で流行していてサル免疫不全ウイルスに近いHIV−2に大別されるが、HIV−1はその構成蛋白質のアミノ酸配列から、さらに細かいサブタイプに分類されている。よく用いられる分類はHIV−1のエンベロープ蛋白質の配列による分類で、主要なグループであるMグループにはサブタイプのAからJが含まれるが、この他にアフリカのカメルーンなどで発見されたO,Nのグループ分類できない(unclassfied)Uグループなどに分けられる。日本ではこれらサブタイプの中で、欧米で流行しているサブタイプB(B型)とタイで流行しているサブタイプE(E型)の報告が多い。
都立衛生研究所では1978年以来、都内保健所及び常設のHIV検査・相談室より搬入された検体に対してHIV抗体検査を実施し、延べ14万件を超える検体から265件の抗体陽性例を確認している。このうち血清学的サブタイピングを行った260件について、日本において主たる流行型とされているB型、E型、その他、にわけて年次推移をみた。サブタイピングはHIV−1のB型、E型のエンベロープのV3領域に相当する合成ペプチドに対する被検血清の反応性を、マイクロプレートELISA法によって確認して行った。B型、E型いずれのペプチドとも反応しないものはその他・不明とした。
サブタイピングされた228件中B型が199件、E型が29件であった。B型は、91年を除いて例年サブタイプの判明したものの2/3を占めている。E型29件の性別は男性11件、女性14件、不明4件であった。抗体陽性例265件のうち性別の分かっているもの255件の内訳が、男性216件、女性39件であるので、E型は男性の約5%に対し、女性では35%くらいの割合になっていて女性に多い。1992年から1995年までのE型については性別以外に国籍を調べた。男性及び不明は日本国籍で、女性はすべて外国籍であった。E型は92年に6件確認された後、漸減していたが、抗体陽性者の増加傾向のはっきりしてきた97年に10件、98年に5件と再びまとまった数が確認されている。96年以後の国籍は調べていないが、女性が多いので外国籍のものが含まれている可能性が高い。
その他・不明のものはELISA法で発色が弱いため型別できなかったものである。他の型なのか、あるいは抗体価が低いためなのかを確かめるため、一部についてPCR法を実施して型別したところ大部分がB型、一部でE型で他の型は確認されなかった。
年 | B型 | E型 | E男 | E女 | E不明 | その他・不明 | 合計 |
87 | 1 | 0 | 0 | 1 | |||
88 | 0 | 0 | 0 | 0 | |||
89 | 0 | 0 | 1 | 1 | |||
90 | 1 | 0 | 0 | 1 | |||
91 | 0 | 0 | 5 | 5 | |||
92 | 13 | 6 | 5 | 1(1) | 0 | 5 | 24 |
93 | 14 | 3 | 1 | 2(2) | 0 | 3 | 20 |
94 | 19 | 2 | 0 | 1(1) | 1 | 6 | 27 |
95 | 20 | 2 | 1 | 1(1) | 0 | 2 | 24 |
96 | 34 | 1 | 0 | 0 | 1 | 9 | 44 |
97 | 40 | 10 | 1 | 8(?) | 1 | 0 | 56 |
98 | 51 | 5 | 3 | 1(?) | 1 | 1 | 57 |
計 | 199 | 29 | 11 | 14 | 4 | 32 | 260 |