東京都健康安全研究センター
1999/2000年冬季の東京都におけるインフルエンザの流行

1999/2000年冬季の東京都におけるインフルエンザの流行(第21巻、2号)

 

2000年2月

 


 1999/2000年冬季の東京都におけるインフルエンザの流行について、都立衛生研究所で実施した遺伝子検査およびウイルス分離試験の結果に基づき概要を報告する。

 インフルエンザ様疾患の学校集団発生例における検査は、1999年12月8日から2000年2月10日に当所に搬入された29集団(小学校24集団、中学校4集団、高等学校1集団)、127検体を対象に実施した。その結果、12月15日に葛飾区の小学校でAソ連(AH1)型インフルエンザウイルスが検出されたのを初発生として、小学校24集団(106件)では、AH1型のみの検出が19集団(61件)、A香港(AH3)型のみの検出が1集団(3件)、AH1型およびAH3型の2型検出が1集団(各々1,3件)であった。中学校4集団(16件)では、AH1型のみの検出が2集団(8件)、AH3型のみの検出が1集団(2件)であった。また、高等学校の1集団は、AH3型のみの検出であった。

 感染症発生動向調査によるインフルエンザウイルス検査は、1999年11月29日から2000年3月26日の間に都内定点病院より搬入された530件を対象に実施した。その結果、2000年第5週(1月31日から2月6日)をピークとして123件からインフルエンザウイルスが検出された。その内訳は、AH1型が64件、AH3型が58件、B型が1件であった。週別のウイルス検出状況をみると、2000年第4週(1月下旬)まではAH1型18件、AH3型37件であったのに対し、第5週以降ではAH1型が46件、AH3型が21件とAH1型が優位に検出された。年齢階層別には、図に示すように0〜3歳では、AH1型およびAH3型がそれぞれ11、12件とほぼ同数の検出、4〜15歳ではAH1型が43件、AH3型が18件とAH1型が優位検出されたのに対し、16〜59歳では、AH1型が9件、AH3型が20件であり、60歳以上では、AH3型のみの検出であった。

 また、インフルエンザウイルス以外では、アデノウイルスが7件、ムンプスウイルスおよびコクサッキーB群ウイルスがそれぞれ1件づつ検出された。

 今冬季に分離されたインフルエンザウイルスは、AH1型は、A/北京262/95様株であり、AH3型は、この3年世界的流行をみているA/シドニー/05/97様株であった。

過去3シーズンのインフルエンザは、A/シドニー/05/97様ウイルスによる流行にB型ウイルスが混在したものであった。今シーズンは、15歳以下の年齢層ではA/北京262/95様ウイルスを主体とし、16歳以上の成人層ではA/シドニー/05/97様ウイルスを主体とする2型による流行であった。若年層でAH1型の流行がみられたのは、過去3年にAH1型による大流行がみられず、15歳以下の年齢層に抗体保有者が少なかったことによるものと推察された。

 調査票による臨床症状としては、例年と同様に発熱、関節痛、頭痛、上気道炎を主症状とするものであったが、嘔吐・下痢を含む胃腸炎を伴う患者が昨シーズンより多くみられたのが特徴であった。また、昨シーズンに多くみられた脳炎・脳症症状を併発する患者の発生は少なかった。

 

 

微生物部 ウイルス研究科 新開敬行

本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します ご利用にあたって
© 2023 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.