東京都健康安全研究センター
東京都において分離された赤痢菌及びサルモネラの薬剤感受性について(1999年)

東京都において分離された赤痢菌及びサルモネラの薬剤感受性について(1999年)(第21巻、5号)

 

2000年5月

 


 1999年に衛生研究所並びに都・区検査機関で分離された赤痢菌とサルモネラについて、衛生研究所で実施した薬剤感受性検査成績の概略を紹介する。
 供試菌株は、都内の患者とその関係者、及び飲食物取扱従事者等における保菌者検索から分離された、赤痢菌7株とサルモネラ292株である。なお昨年までは、海外旅行者による輸入事例由来菌株についても合わせて紹介してきたが、本年度は4月からのいわゆる感染症新法の施行にともない検体数が激減、分離菌株数も10株以下であったため除いた。
 薬剤感受性試験は、例年同様、米国臨床検査標準委員会(NCCLS)の抗菌薬ディスク感受性試験実施基準に基づき、市販の感受性試験用ディスク(センシディスク;BBL)を用いて行った。供試薬剤は、クロラムフェニコール(CP)、テトラサイクリン(TC)、ストレプトマイシン(SM)、カナマイシン(KM)、アンピシリン(ABPC)、スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤(ST)、ナリジクス酸(NA)、ホスホマイシン(FOM)及びノルフロキサシン(NFLX)の9剤である。
 赤痢菌及びサルモネラの菌種・菌群別にみた耐性菌の出現頻度を表に示した。
 赤痢菌7株は全株耐性であった。これら耐性株の耐性パターンは、ソンネ(D群)菌6株はいずれもTC・SM・ST・NA、フレキシネル(B群)菌1株はCP・TC・SM・ABPC・STであった。
 一方、サルモネラにおける耐性菌の出現頻度は25.0%で、前年(37.9%)よりかなり低い結果であった。これは例年に比較してO7群に属する菌が全体の44.2%と高頻度(S.Oranienburg、S.Infantis、S.Thompsonなど)に検出されており、そのほとんどが感受性株であったことを反映している。O群別では、例年と同様O8群(62.9%)及びO9群(56.0%)の耐性頻度が高かった。薬剤別耐性頻度は、SM(19.6%)、TC(13.1%)、NA(5.2%)、CP(4.5%)、ABPC(4.5%)、ST(4.5%)、KM(2.1%)の順で高かった。なおFOM耐性株及びNFLX耐性株は認められなかった。その耐性パターンは20種認められ、SM単剤(24株)、TC・SM(9株)、NA単剤(9株)、CP・TC・SM・ABPC(4株)、TC・SM・ST(4株)、TC単剤(4株)が主要なものであった。
 主要血清型(5株以上検出された血清型)は S .Enteritidis(48株)、 S .Oranienburg(37株)、 S .Infantis(32株)、 S .Thompson(20株)、 S .Typhimurium(13株)、 S .Litchfield(9株)、 S .Hadar(8株)、 S .Tennessee(8株)、 S .Mbandaka(7株)、 S .Montevideo(6株)、 S .Orion(6株)、 S .Saintpaul(6株)、 S .Anatum(5株)、 S .Corvallis(5株)であった。これらの血清型の中で耐性頻度が高かったのは S .Hadar(100%)、 S .Corvallis(80.0%)、 S .Enteritidis(56.3%)、 S .Typhimurium(63.8%)であった。なお、チフス菌が1株検出されているが感受性株であった。

 

赤痢菌及びサルモネラの薬剤耐性菌の出現頻度(1999年:東京)

菌種・菌群 試験株数 耐性株数(%)
赤痢菌 7 7(100)
A 群
B 群
C 群
D 群
-
1
-
6
-
1(100)
-
6(100)
サルモネラ 262 73(25.0)
チフス菌
O4群
O7群
O8群
O9群
O3,10群
その他のO群
1
40
129
35
50
21
16
0
12(30.0)
6( 4.6)
22(62.9)
28(56.0)
2( 9.5)
3(18.8)

 

微生物部 細菌第一研究科 有松真保、松下 秀

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