東京都において分離された赤痢菌及びサルモネラの薬剤感受性について(2000年)(第22巻、4号)
2001年4月
2000年に衛生研究所並びに都・区検査機関で分離された赤痢菌とサルモネラについて、衛生研究所で実施した薬剤感受性検査成績の概略を紹介する。
供試菌株は、都内の患者とその関係者、及び飲食物取扱従事者等における保菌者検索から分離された、赤痢菌30株(海外旅行者由来17株を含む)とサルモネラ236株(海外旅行者由来4株を含む)である。
薬剤感受性試験は、例年同様、米国臨床検査標準委員会(NCCLS)の抗菌薬ディスク感受性試験実施基準に基づき、市販の感受性試験用ディスク(センシディスク;BBL)を用いて行った。供試薬剤は、クロラムフェニコール(CP)、テトラサイクリン(TC)、ストレプトマイシン(SM)、カナマイシン(KM)、アンピシリン(ABPC)、スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤(ST)、ナリジクス酸(NA)、ホスホマイシン(FOM)及びノルフロキサシン(NFLX)の9剤である。
赤痢菌及びサルモネラの菌種・菌群別にみた耐性菌の出現頻度を表に示した。
赤痢菌では30株中28株(93.3%)が耐性であった。薬剤別耐性頻度はTC(86.6%)、SM(86.6%)、ST(83.3%)、ABPC(66.7%)、CP(40.0%)、NA(36.7%)、KM(3.3%)、NFLX(3.3%)の順で高かった。FOM耐性株は検出されなかった。これら耐性株の耐性パターンは13種認められ、ソンネ(D群)菌の耐性14株ではTC・SM・ST(5株)、TC・SM・ST・NA(3株)、CP・TC・SM・ABPC・ST(2株)、フレキシネル(B群)菌の耐性13株ではCP・TC・SM・ABPC・ST・NA(5株)、TC・SM・ABPC・ST(2株)、TC・SM・ABPC(2株)が主要なものであり、ボイド(C群)菌1株はTC・SM・ABPC・ST耐性であった。なお、今回初めて、治療薬として汎用されている新キノロン剤の一種であるNFLXに耐性を示す株が1株検出された。その血清型はフレキシネル2aで、CP、TC、SM、ABPC、ST、NAにも耐性であった。
一方、サルモネラにおいては236株中60株(25.4%)が耐性株で、前年(25.0%)とほぼ同様の耐性頻度であった。O群別では、例年と同様O9群(53.1%)及びO8群(52.2%)の耐性頻度が高かった。薬剤別耐性頻度は、SM(19.9%)、TC(13.6%)、ABPC(4.2%)、ST(3.8%)、KM(3.0%)、CP(2.5%)、NA(2.1%)の順で高かった。その耐性パターンは19種認められ、SM単剤(21株)、TC・SM(9株)、TC単剤(5株)、NA単剤(3株)、CP・TC・SM・ABPC(3株)、TC・SM・ST(3株)が主要なものであった。なお、FOMとNFLX耐性株は認められなかった。
主要血清型(5株以上検出された血清型)は S. Enteritidis(48株)、 S. Oranienburg(19株)、 S. Thompson(18株)、 S. Infantis(17株)、 S. Saintpaul(11株)、 S. Virchow(11株)、 S. Agona(8株)、 S. Typhimurium(8株)、 S. Anatum(7株)、 S. Hadar(7株)、 S. Muenster(6株)、 S. Tennessee(6株)、 S. Braenderup(5株)であった。これらの血清型の中で耐性頻度が高かったのは S. Hadar(100%)、 S. Enteritidis(54.2%)、 S. Braenderup(40.0%)、 S. Agona(37.5%)、 S. Typhimurium(25.0%)であった。チフス菌2株はいずれも海外旅行者による輸入例で、1株はNA単剤耐性株であった。
赤痢菌及びサルモネラの薬剤耐性菌の出現頻度(2000年:東京)
菌種・菌群 | 試験株数 | 耐性株数(%) |
赤痢菌 | 30 | 28(93.3) |
A群 B群 C群 D群 |
- 14 1 15 |
- 13(92.9) 1(100) 14(93.3) |
サルモネラ | 236 | 60(25.4) |
チフス菌 O4群 O7群 O8群 O9群 O3,10群 その他のO群 |
2 42 90 25 49 19 9 |
1(50.0) 10(23.8) 10(11.1) 12(52.0) 26(53.1) 1(5.3) 0(0.0) |