都内保健所受診者HIV抗体陽性例におけるHIVのサブタイプ解析(第22巻、9号)
2001年9月
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は全世界的に流行しているHIV−1と主に西アフリカで流行しているHIV−2に大別されるが、HIV−1はさらに細かくサブタイプに分類され、サブタイプのAからJまでを含むMグル−プ、アフリカのカメル−ンで発見されたO,Nグル−プ、分類できない(unclassified)Uグル−プなどに分けられる。日本では欧米を中心に流行しているサブタイプB,タイで流行しているサブタイプEの報告が多い(図1)。
東京都立衛生研究所では1987年以来保健所、南新宿検査・相談室などの受診者のHIV抗体検査を実施している。検査開始以来398件のHIV抗体陽性者を検出し、更にマイクロプレ−トELISA法を用いて、サブタイプB,サブタイプE,その他に分けて、HIVのサブタイプ解析を行っている。検出された398件はすべてHIV−1で、そのサブタイプはサブタイプBが314件、サブタイプEが37件、その他47件である。全体の性別では男性335件、女性49件、不明14件と男性が85%以上を占めるが、サブタイプEは、37件のうち19件と女性が過半数を占め、女性に多いのが特徴である。92年から95年についてはサブタイプE抗体陽性例の国籍・性別が判明しているが、女性は全員、アジア出身の外国人で、男性は全員日本人であった(表1)。
2000年には67件のHIV抗体陽性者を検出し、サブタイプ解析を行ったが、そのうち性別、国籍、感染経路の明らかな59件についてサブタイプとの関連を検討した(表2)。性別は男性56、女性3と男性が大部分を占め、また国籍別では日本人が53名と多かった。サブタイプ別ではサブタイプBが54件、サブタイプEが3件、その他2件であった。サブタイプBは日本人男性と外国人の男女に見られ、最も多い感染経路は同性間の性的接触で44件であった。サブタイプEの3件はすべて日本人で男性が1件、女性が2件であった。サブタイプEに感染した男性1件の感染地はタイで、女性2件の感染地は国内である。外国人6件の国籍はスペイン、ニュ−ジ−ランド、ブラジル、アメリカ合衆国などであるが、いずれも出身国で主に流行しているサブタイプBであった。感染地が海外のものは3件で、すべて日本人男性であるが、上記タイで異性間性的接触で感染したサブタイプEの1件と、同性間性的接触でタイとアメリカ合衆国で感染したサブタイプBの2件であった。
図1 HIVサブタイプの分布とHIV感染者数
表1 HIV抗体陽性例の年次別サブタイピング
年 | 検査件数 | B型 | E型 | その他 |
87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 |
1 0 1 1 5 24 20 27 24 44 56 62 66 67 |
1 0 0 1 0 13 14 19 20 34 46 50 56 60 |
0 0 0 0 0 6(1)* 3(2)* 2(1)* 2(1)* 1 10(8) 4(1) 6(3) 3(2) |
0 0 1 0 5 5 3 6 2 9 0 8 4 4 |
合計 | 398 | 314 | 37(19) | 47 |
()内は女性、()*内は外国人女性
表2 HIVのサブタイプと感染経路(2000年)
国籍・感染経路 | サブタイプ | |||
B型 | E型 | その他 | 合計 | |
日本人・男同性間 異性間 両性間 |
41*** 5 2 |
0 1* 0 |
1** 1** 0 |
42
7 |
日本人・女異性間 | 0 | 2** | 0 | 2 |
外国人・男同性間 異性間 両性間 |
3 1 1 |
0 0 0 |
0 0 0 |
3 1 1 |
外国人・女異性間 | 1 | 0 | 0 | 1 |
合 計 | 54 | 3 | 2 | 59 |
*:感染地タイ、**:感染地国内、***:感染地タイ1名、アメリカ1名含む