東京都健康安全研究センター
デング熱(Dengue Fiver:DF)

デング熱(Dengue Fiver:DF)(第22巻、12号)

 

2001年12月

 


 近年、急激に患者数が増大し再興感染症として警戒すべきものにデングウイルス感染症がある。DFは、蚊(熱帯シマカ)が媒介するウイルス性の熱性・発疹性疾患である。臨床症状としては、突然の発熱で発症し、頭痛、眼窩痛、関節・筋肉痛、消化器症状(腹痛、嘔気、嘔吐)、呼吸器症状(咳嗽、咽頭痛、鼻炎)、結膜充血、眼瞼腫脹等を伴うが、その型は非特異的である。DFそのものはそれほど重い病気ではないが、血小板減少による出血症状を伴うデング出血熱(Dengue haemorrhagic fiver : DHF)やデングショック症候群(Dengue shock syndrome : DSS)に至ると生命にかかわる重篤な病型となる。

 日本国内にはデングウイルスは常在しない。従って、国内で感染したDFの患者発生はなく、流行国からの帰国者すなわち輸入感染症に限られている。2001年9月に、WHOはアメリカ大陸、東南アジア、太平洋地域においてDFの流行を報告している。表1に示したブラジル、ベネズエラ等の国々でDFが流行している。

 デングウイルスには4種(1〜4型)の血清型があり、同じ型のウイルスには再感染しないが、他の型のデングウイルスには感染し、発症しうる。一つの地域において複数の型のウイルスが存在している。感染は、主として熱帯シマカに刺されることによるが、ヒトスジシマカもウイルスを媒介することがある。熱帯シマカは日本に生息していないが、ヒトスジシマカは存在している。感染経路はヒト→蚊→ヒトであり、ヒト→ヒトの直接感染はない。熱帯シマカは、湿地や沼地だけでなく、ほんのちょっとした水があれば(家の回りの水かめ、たまり水、花瓶の中の水等)卵を産み、卵は乾燥しても生き延び、再び水を得るとボウフラとなり成虫になる。蚊が多い環境であれば、郊外・農村・都市生活にかかわらず感染は容易に起こる。患者の血液を吸った熱帯シマカの雌は、その生涯にわたってウイルスを保持するとされている。

 DFは、『感染症新法』において「四類感染症全数把握」の対象疾患であり、診断7日以内に保健所に報告する義務がある。

 新法施行後の患者届出数を表2に示した。各年次それぞれ9症例(東京=4例)、18症例(12例)、45症例(19例)と増加傾向にある。感染推定地は、インドネシア、タイ、フィリピン等ですべて輸入感染症である。

 実験室内診断法は、5病日以前の患者血液についてはウイルス分離や遺伝子検索を行う。ウイルス分離試験は、蚊由来C6/36細胞やアフリカミドリザル由来Vero細胞を用いる。遺伝子検索については、RT-PCR法によるウイルスRNAの検索を行い、型特異プライマーを用いてウイルス遺伝子の型別診断を行う。解熱後(6病日以降)の血清については、中和試験や酵素抗体法により特異的免疫グロブリンM・G抗(IgM・IgG)の検索を行う。IgM捕捉酵素抗体法によりIgM抗体が検出されればDFと診断できる。また、急性期に比し回復期における特異中和抗体価やHI抗体価の4倍以上の上昇によっても診断可能である。

 治療は、対症療法しかない。水分補給(飲水)が重要である。アスピリンのように抗血小板作用の強い鎮痛解熱剤は使用してはならない。日常の注意としては、「蚊に刺されないようにすること」につきる。蚊の吸血行動は、昼間吸血性で午前中は夜明けから数時間、午後は日没前数時間に最も活発になる。日陰や室内、又は曇天では一日中活動する。

 

表.1 2001年におけるデング熱流行地域

 

流行地域 2001年
報告週
患 者 数 備  考
DF DHF 死亡者
ブラジル
ベネズエラ
カンボジア
ラオス
マレーシア
フィリピン
ベトナム
ポリネシア
1〜22週
1〜29週
1〜30週
1〜30週
1〜13週
1〜30週
1〜26週
1〜31週
187,297
19,085
4,163
1,432
325
7,697
15,005
27,100
164
1,660
 
 
15
 
 
156*
14
2
90
 
 
67
38
4
デングウイルス1型、2型
 
2000年 3,148例(死亡73例)
2000年 1,377例(死亡4例)
2000年 7,118例、デング3型
2000年 7,731例
2000年 24,116例(死亡51例)
*デングショック症候群

(海外感染症情報)

表.2 デング熱患者報告数

 

年次 患者報告数 推定感染地
全国 東京都
1999 9 4 インド、タイ、フィリピン
2000 18 12 インド、タイ、
インドネシア、フィリピン、
バングラディシュ、
ドミニカ共和国
2001 45 19 タイ、インドネシア、
カンボジア、ミャンマー、
タヒチ

 

 

 

微生物部 ウイルス研究科 吉田 靖子

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