東京都健康安全研究センター
東京都における輸入細菌性下痢症、2001年

東京都における輸入細菌性下痢症、2001年(第23巻、2号)

 

2002年2月

 


 

 本号では、海外旅行者を対象に主として衛生研究所で実施した昨年1年間(2001年1月〜12月)の腸管系病原菌検索成績について紹介する。

 この間に実施された海外旅行者検便数は108件(下痢現症者66件、下痢既往者及び健康者42件)であり、昨年の78件に比べやや増加した。これらのうち何らかの腸管系病原菌が検出されたのは、下痢現症者群で42件(63.6%)、下痢既往者及び健康者群で12件(28.6%)、全体では54件(50.0%)であった。全体での陽性率が例年に比べ高いのは、下痢現症者の割合が本年は高いことを反映している。本疾病では複数病原菌検出例の頻度が高いことが知られているが、陽性者のうちの14.8%にあたる8件から2種類の病原菌が検出された。

 検出病原菌を検出頻度別にみると、例年と同様に毒素原性大腸菌が17株と最も高率で検出病原菌の27.0%を占めた。次いで赤痢菌12株(19.0%)、カンピロバクター11株(17.5%)、病原血清型大腸菌6株(9.5%)、毒素産生性コレラ菌5株(7.9%)、サルモネラ4株(6.3%)、エロモナス、プレジオモナス各3株(4.8%)、パラチフスA菌、腸炎ビブリオが各1株(1.6%)の順であった。なお赤痢菌12株のうち7株は、23区検査機関で赤痢菌が検出された海外旅行者の同行者についての検査において検出されたものである。その内訳は、ソンネ菌11株及びフレキシネル菌(血清型3a)1株であった。コレラ菌5株は、エルトール小川型3株、エルトール稲葉型2株であった。サルモネラは4株検出され、その血清型はDerby(O4群)、Albany(O8群)、Hadar(O8群)、Panama(O9群)であった。

 表には旅行地域別の病原菌検出状況を示す。東南アジアへの旅行者71名のうち陽性者は36名(50.7%)であった。検出菌は、毒素原性大腸菌14株(ST産生10株、ST+LT産生3株、LT産生1株)、カンピロバクター6株(
jejuni 5株、 hyointestinalis 1株)、コレラ菌5株(小川型3株はフィリピン及びインドネシア旅行者から、稲葉型2株はタイ旅行者から検出)、病原血清型大腸菌5株(O26、O55、O111、O119、O128各1株)、赤痢菌3株(ソンネ2株、フレキシネル3a1株)、サルモネラ3株(O8群2株、O9群1株)、エロモナス3株(
sobria 2株、 hydrophila 1株)、プレジオモナス3株、腸炎ビブリオ(O4:K68)1株と多岐にわたっていた。中東・西アジアへの旅行者13名のうち陽性者は2名(15.4%)であった。なお8名は同一ツアーへの参加者であり、同行者から赤痢菌が検出されたということで検査したが、腸管系病原菌は検出されなかった。それ以外の5名のうち2名からソンネ赤痢菌が検出された。インド亜大陸への旅行者は11名で、そのうち9名(81.8%)が陽性で、カンピロバクター4株(
jejuni 、 coli 各2株)、ソンネ赤痢菌3株、パラチフスA菌(ファージ型4、インド旅行者)、毒素原性大腸菌(LT産生)、病原血清型大腸菌(O111)各1株が検出された。韓国・北朝鮮への旅行者5名のうち、3名(60.0%)が陽性で、いずれもソンネ赤痢菌が検出された。中国・モンゴルへの旅行者3名では、1名(33.3%)が陽性で、毒素原性大腸菌(ST産生)が検出された。また、その他の地域5名(アジア全域3名、アフリカ1名、ヨーロッパ1名)のうち陽性者は3名(60.0%)で、アジア全域への旅行者2名からはサルモネラO4群とソンネ赤痢菌が検出され、アフリカへの旅行者1名からは毒素原性大腸菌(ST+LT産生)、カンピロバクター(
jejuni )の両者が検出された。

表 海外旅行者からの腸管系病原菌検出状況(東京都立衛生研究所:2001年)

 

旅 行 地 域 東南アジア 中東・西アジア インド亜大陸 韓国・北朝鮮 中国・モンゴル その他
検 査 件 数 71 13 11 5 3 5 108
病原菌陽性者数(%) 36

(50.7)

2

(15.4)

9

(81.8)

3

(60.0)

1

(33.3)

3

(60.0)

54

(50.0)

検出病原菌

  毒素原性大腸菌

  赤痢菌

  カンピロバクター

  病原血清型大腸菌

  コレラ菌(毒素産生)

  サルモネラ

  エロモナス

  プレジオモナス

  パラチフスA菌

  腸炎ビブリオ

 

14

3

6

5

5

3

3

3

  

1

 

 

2

   

   

   

   

   

   

   

   

 

1

3

4

1

   

   

   

   

1

   

 

   

3

   

   

   

   

   

   

   

   

 

1

   

   

   

   

   

   

   

   

   

 

1

1

1

   

   

1

   

   

   

   

 

17

12

11

6

5

4

3

3

1

1

 

同一検体から複数菌が検出される例があるので、病原菌陽性者数と検出病原菌数とは一致しない場合がある。

微生物部細菌第一研究科 河村真保 

多摩支所微生物研究科 松下 秀 

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