東京都において分離された赤痢菌及びサルモネラの薬剤感受性について(2001年)(第23巻、5号)
2002年5月
2001年に衛生研究所並びに都・区検査機関で分離された赤痢菌とサルモネラについて、衛生研究所で実施した薬剤感受性検査成績の概略を紹介する。
供試菌株は、都内の患者とその関係者、及び飲食物取扱従事者等における保菌者検索から分離された、赤痢菌31株(海外旅行者由来22株を含む)とサルモネラ203株(海外旅行者由来4株を含む)である。
薬剤感受性試験は、例年同様、米国臨床検査標準委員会(NCCLS)の抗菌薬ディスク感受性試験実施基準に基づき、市販の感受性試験用ディスク(センシディスク;BBL)を用いて行った。供試薬剤は、クロラムフェニコール(CP)、テトラサイクリン(TC)、ストレプトマイシン(SM)、カナマイシン(KM)、アンピシリン(ABPC)、スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤(ST)、ナリジクス酸(NA)、ホスホマイシン(FOM)及びノルフロキサシン(NFLX)の9剤である。
赤痢菌及びサルモネラの菌種・菌群別に見た耐性菌の出現頻度を表に示した。
赤痢菌では31株中28株(90.3%)が耐性であった。薬剤別耐性頻度はTC(83.9%)、SM(83.9%)、ST(83.9%)、NA(22.6%)、CP(16.1%)、ABPC(12.9%)の順で高かった。KM、FOM及びNFLX耐性株は検出されなかった。これら耐性株の耐性パターンは11種認められ、ソンネ(D群)菌の耐性21株ではTC・SM・ST(11株)、TC・SM・ST・NA(6株)が主要なものであり、フレキシネル(B群)菌の耐性5株はそれぞれCP・TC・SM・ABPC・ST、CP・TC・SM・ABPC、CP・TC・SM・ST・NA、TC・SM・ST、TC・SM耐性、ディセンテリー(A群)菌1株はSM・ST耐性、ボイド(C群)菌1株はCP・TC・SM・ABPC・ST耐性であった。
一方、サルモネラにおいては203株中65株(32.0%)が耐性株で、前年(25.4%)と比べると耐性頻度が若干高かった。O群別では、例年と同様O9群(59.4%)及びO8群(55.0%)の耐性頻度が高かった。薬剤別耐性頻度は、SM(25.1%)、TC(19.7%)、ABPC(6.9%)、ST(6.9%)、NA(6.9%)、KM(5.9%)、CP(4.9%)、FOM(0.5%)の順で高かった。その耐性パターンは23種認められ、SM単剤(13株)、TC・SM(8株)、TC・SM・KM・ST(5株)、TC・SM・NA(5株)が主要なものであった。なお、NFLX耐性株は認められなかった。
主要血清型(5株以上検出された血清型)は S. Enteritidis(31株)、 S. Thompson(15株)、 S. Hadar(14株)、 S. Saintpaul(13株)、 S. Oranienburg(11株)、 S. Typhimurium(9株)、 S. Tenessee(9株)、 S. Newport(9株)、 S. Derby(8株)、 S. Infantis(8株)、 S. Agona(5株)であった。これらの血清型の中で耐性頻度が高かったのは S. Hadar(100%)、 S. Enteritidis(58.1%)、 S. Derby(50.0%)、 S. Typhimurium(44.4%)、 S. Infantis(37.5%)であった。チフス菌1株は国内由来で感受性株であった。パラチフスA菌4株は、海外由来株3株中NA単剤耐性1株、FOM単剤耐性1株、感受性株1株で、国内由来株1株はNA単剤耐性であった。
赤痢菌及びサルモネラの薬剤耐性菌の出現頻度(2001年:東京)
菌種・菌群 | 試験株数 | 耐性株数(%) |
赤痢菌 | 31 | 28(90.3) |
ディセンテリー フレキシネル ボイド ソンネ |
1 6 1 23 |
1(100) 5(83.3) 1(100) 21(91.3) |
サルモネラ | 203 | 65(32.0) |
チフス菌 パラチフスA菌 O4群 O7群 O8群 O9群 O3,10群 その他のO群 |
1 4 44 60 40 32 10 12 |
0( 0.0) 3(75.0) 14(31.8) 5( 8.3) 22(55.0) 19(59.4) 1(10.0) 1( 8.3) |
微生物部 細菌第一研究科 河村真保