東京都健康安全研究センター
平成29年の食中毒発生状況

 平成29年に全国および東京都内で発生した食中毒事件の概要と特徴について、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課並びに東京都福祉保健局健康安全部の資料に基づいて紹介する。

 

1.全国における食中毒発生状況

 

 食中毒事件総数は1,014件、患者数は16,464名(死亡者3名)であり、事件数は前年比0.89、患者数は前年比0.81であった。そのうち原因物質不明は29件(2.9%)、患者数599名(3.6%)であった。

 事件数を原因物質別に見ると、細菌性食中毒は449件(44.3%)、前年比0.94でやや減少した。原因菌別の第1位は、平成15年以降連続してカンピロバクター320件(31.6%)、サルモネラ35件(3.5%)、ウエルシュ菌27件(2.7%)、黄色ブドウ球菌22件(2.2%)、腸管出血性大腸菌17件(1.7%)、その他の病原大腸菌11件(1.1%)、腸炎ビブリオ7件(0.7%)、セレウス菌5件(0.5%)、その他の細菌が3件(0.3%)、ボツリヌス菌1件(0.1%)、エルシニア・エンテロコリチカ1件(0.1%)であった。その他の細菌3件のうち2件はA群溶血性レンサ球菌、1件はエシェリキア・アルベルティイによるものであった。

 細菌性食中毒の患者数は6,621名(40.2%)、前年比0.88でやや減少した。患者数の多い原因菌は、カンピロバクター2,315名、ウエルシュ菌1,220名、サルモネラ1,183名、その他の大腸菌1,046名であった。1事件あたり患者数500名以上の大規模食中毒の発生はなかった。

 また、8月には広域的な集団食中毒事例として、腸管出血性大腸菌O157(VT2)による事例が飲食店や惣菜チェーン店など関東地方を中心に多発して1名が死亡した。惣菜チェーン店を原因施設とする食中毒事例においては、患者のほとんどがサラダ類を喫食していたが、原因の特定には至らなかった。

 一方、ノロウイルスによる食中毒は、事件数214件(21.1%)、患者数8,496名(51.6%)であり患者数は最も多かったが、前年比は事件数0.60、患者数0.75と減少した。1事件あたり患者数500名以上の大規模食中毒は、1月に和歌山県で学校給食の「磯和え」を原因とした患者数763名の事例と、2月に東京都において学校給食の「親子丼」を喫食した患者数1,084名の事例の計2事例が発生した。この2事例はどちらも同じ製造者の「きざみのり」が使用され、仕入れ先の未開封品「きざみのり」からノロウイルスが検出されている。

 平成25年より食中毒病因物質の種別に追加されたアニサキスによる食中毒は、230件(22.7%)で前年比は1.85に増加していた。クドアによる食中毒は12件(1.2%)であった。化学物質による食中毒は9件(0.9%)、植物性自然毒は34件(3.4%)、動物性自然毒は26件(2.6%)であった。その他の4件はカンピロバクター及びサルモネラ、サルモネラ及び腸炎ビブリオ、サルモネラ及び腸管出血性大腸菌といった混合感染による事例と1件は黄色ブドウ球菌エンテロトキシンによると疑われた事例であった。

 食中毒による死亡者は3名で、その原因菌は前述の腸管出血性大腸菌O157、ボツリヌス菌、植物性自然毒(イヌサフラン)によるものであった。

 

2.東京都における食中毒発生状況

 

 都内の食中毒発生状況は、事件数132件(患者数2,628名)、死者数1名であった。平成28年の事件数136件(患者数2,309名)と比べ、事件数は0.97で減少、患者数は1.14でやや増加した。食中毒132件中、細菌によるものは57件(43.9%)であった。原因菌ではカンピロバクターが最も多く45件(34.1%)、以下、黄色ブドウ球菌4件(3.0%)、ウエルシュ菌4件(3.0%)、ボツリヌス菌、その他の大腸菌、セレウス菌、その他の細菌(A群溶血性レンサ球菌)が各1件(0.8%)であった。細菌性食中毒の患者数は821名(31.2%)、前年比0.69で減少した。患者数では、カンピロバクター296名、次いでウエルシュ菌276名、その他の大腸菌177名で、患者数100名以上の大規模な事件は、耐熱性毒素様毒素遺伝子(astA)保有大腸菌による事例(患者数177名)があり、原因食品は「和風のりパスタ及びオクラとちくわの和え物」であった。死亡した1名は蜂蜜の摂取が原因と推定された乳児ボツリヌス症によるものであった。

 ノロウイルスによる食中毒は、事件数25件(18.9%)、前年比0.49と減少したが、患者数は1,616名(61.5%)と前年比1.51の増加が認められた。平成29年はノロウイルスによる患者数1,084名の大規模な事件が1事例あり、前述したように学校給食で提供された「きざみのり」が原因食品であった。

 アニサキスによる食中毒は47件(35.6%)発生し、平成29年の食中毒事件数では最多で、前年比2.24で増加した。クドアによる食中毒は1件であった。

 平成29年は化学物質、植物性自然毒、動物性自然毒による食中毒の発生は無かった。

 また、原因物質不明の食中毒は1件(患者数112名)あり、高校の防災訓練において提供された食事が原因で発生した。

 

(食品微生物研究科 尾畑浩魅)

 

表. 平成29年の食中毒発生状況

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